2021年10月24日

だしの科学〜だしの濁り〜

“だしが濁る”という表現を聞いたことがあるでしょうか?
雰囲気的にあまり良い意味ではないと思った方、その通りです。それどころか節屋にとってはかなり耳の痛い話です。価格交渉のときに「だしが濁るんだよね〜」と言われ、希望価格で売れなかったという経験はどの節屋もしていることでしょう。
前回のブログのように和食は引き算の料理、余分なものは嫌われます。だしの濁りとは、味的にも見た目的にもその余分なものに他ならないと言えます。
今回のだしの科学ではこの「だしの濁り」の発生のメカニズムから抑制方法まで論文を読んで解明していきます。

だしの濁りの原因は、ずばり脂質です。これまでも原魚に脂が多いと良い宗田節ができないとか、脂の少ない時期の寒目近が良い宗田節になると言ってきた意味はここにあります。
ただこの論文によると、「だしの濁りがある=だし中の脂肪含量が多い」という実験結果に対し、「節の脂肪含量が多い≒だしが濁る」となるようです。
これはさらに詳しく濁りの原因を探る必要がありそうです!

百聞は一見に如かず。
だしの濁りの原因物質を図示しました。(論文中の写真の模写です)

脂肪球が遊離する様子

原因物質はずばりオレンジの球(分かりやすく着色しています)
その名も「脂肪球」!
図は脂肪含量の多い宗田節を電子顕微鏡で見たものですが、だしをとった後はこの脂肪球が減少し、だしの中に移行し濁るのが分かりました。

「節の脂肪含量が多い≒だしが濁る」となる理由は、節の筋繊維に付いている脂肪球がだしに移行する割合に差があるためで、移行率は1.2〜3.5%と低いうえに節によっては5〜20倍も移行率に差が見られました。
※原魚の鮮度が悪かったり、煮熟や焙乾が不十分だと移行率が高くなるとも言われているようです。この移行率が低い節をつくるのが節屋の腕の見せ所でしょうか。

これでだしが濁るメカニズムは解明できました。続く濁りの抑制方法とは?

実はこの濁りの抑制方法はみなさんご存じです。
ポイントは2つ。
@長時間だしを抽出しない
Aダシパックや濾し袋を使用する

それぞれの解説としては、
@だしの抽出時間と成分の関係を調べたところ、3〜5分ほどでうまみが出て後は一定であるのに対し、脂肪量(濁り)は時間がたつほど大きくなるため。
Aダシパックや濾し袋を使用することで、削り節の動きが抑えられ脂肪球がだしに移行することが減り、だしの濁りが抑制される

もちろん削り節の形状や用途によってだしの取り方は変わることと、ダシパックの繊維が脂肪球を取り除いているのではないということに注意です。
※ダシパック等の網目より脂肪球の方が小さいため通過します。網目(50〜100μm )>脂肪球(1〜30μm )

今回は2つの論文をまとめたので少し長くなりましたが、興味のある方は原文を読んでみてください。

「節によるだし汁の濁りの生成と原因成分:山澤正勝著(2010)」
「だし調製条件によるだし汁の濁りの生成とその抑制:山澤正勝著(2012)」
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2021年09月24日

だしの科学〜和食を支えるだしの魅力〜

新シリーズ「だしの科学」と題してネットで閲覧できる論文をもとに、だしや節に関して科学的に迫っていきたいと思います。
閲覧できる論文は宗田節に関するものは非常に少なく鰹節が主ですが、科学的な部分では鰹節と宗田節は似通っている部分も多いため、同様として扱うこととします。
参考にした論文はタイトルと著者を記しますので、興味がある方はぜひ検索して一読してみてください。

前置きが長くなりましたが今回は、「和食を支えるだしの魅力:近藤高史著」を参考に、だしと節に迫ります。

日本と海外でのだしの素材は全く異なり、日本では昆布や節・シイタケなど乾燥素材を使うのに対し、海外では生の肉や魚・野菜を使用します。
乾燥素材を用いることにより短時間で成分を引き出し、低カロリー・低脂質といった特徴を持ちながら旨味成分は海外にひけをとらないものとなります。

よく和食は引き算の料理と言われるように、丁寧な下処理で余分なものを引き、だしによって野菜や魚介類などの具材の持ち味を引き出すことを本質としています。

だしの構成要素は「うま味+香り+その他」であり、「昆布のグルタミン酸」と「節や煮干しのイノシン酸・干しシイタケのグアニル酸」を合わせることで、それぞれ単独で使うよりはるかにうま味が増す「うま味の相乗効果」が知られています。
うま味の相乗効果
こういった特徴から和食は世界的に見ても「おいしくて健康」な料理であり、近年の和食ブームの要因となっています。

さらにかつおだしの機能性に焦点をあててみると、肉体・精神問わず様々な疲労改善効果が示されています。これは(ソウダガツオも含め)カツオが、通常の魚と異なりエラ呼吸できず浮袋もないためずっと泳ぎ続ける疲れ知らずの魚であることによります。

さらにはラットの行動観察から繰り返し摂取することで抗不安作用が認められ、ヒトの実験結果から胃の運動が整い満腹感を促進することも示されています。

総括すると、日本の食文化は世界に誇れる素晴らしい食文化であり、健康的で風味が良く、飽きずに毎日継続して摂取でき、またそうすることでより健康的になるということが明らかにされつつあるようです。

「だしの科学」では今後もだしや節に関しての論文を読んで勉強していきます。
ネット上では他にも様々な分野の論文が閲覧できますので、皆さんも自分の仕事に関することや趣味など興味のある分野の論文を読んでも面白いかもしれません。

※転載する場合などは著作権に配慮してください、当ブログでは直リンクや図などの転載は控えます。
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2021年03月24日

宗田節と猫

2016年に猫の飼育頭数が初めて犬を超え、コロナ禍でも癒しを求め飼う人が増えているようです。
学生時代に犬を2匹、現在は猫を3匹飼っている者として散歩の手間のかからない猫が人気なのは理解できます。

人間と同様、ペットも長生きになってきて病気のリスクも増えました。砂漠を起源とする猫は少ない水分で生き抜くために腎臓の働きが強く、高齢になるにつれ腎臓病で亡くなることが多いようです。腎臓の機能は一度悪くなると回復しないためです。

となると、元気に長生きしてもらうためには腎臓をいたわることが大事です。
そのためにはやはり食事、特に塩分量に気をつける必要があります。
削り節は塩分が多いので猫にあげてはいけないという話もありますが本当にそうか調べてみました。
ペット塩分量
通常のペットフードと腎臓ケアのペットフード、通常の鰹節とペット用の減塩の鰹節、それと宗田節の塩分量の比較です。
削り節もペットフードと比べて、特に塩分が多いわけではないことが分かります。
それもそのはず、節や削り節の製造工程において、塩分を添加することはありません。

今回は栄養成分表示義務がある塩分量での比較をしましたが、リンやマグネシウムなど気をつけなければならない成分は他にもあります。

塩分が多いから削り節を猫にあげてはいけない!ということはありませんが、その他の成分のバランスも考えてキャットフードを総合栄養食としてメインで食べてもらい、削り節はたまにあげるおやつとして楽しんでもらえれば良いと思います。

猫たちと削り節
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2021年01月24日

黒潮の話〜流路と漁の予測〜

黒潮シリーズの宗田節ブログも今回で5回目になりました。
今回の〜流路と漁の予測〜で一区切りとしたいと思います。
その前に、もう一度これまでの話からメヂカ漁に関するポイントをまとめてみます。

1. 足摺岬・室戸岬に黒潮が接岸している方が良い
2. 大蛇行=不漁ではないが、接岸=好漁とも言えない

という何とももどかしいまとめになりますが、何せ相手は魚、海況が良くても実際に来遊してきて釣れるかどうかは不明です。
さらに船の下が真っ黒に見えるほど泳いでいても、一切釣れない時もあるという話です。

予測の前に防衛線を張りまくっている気がしますが、そもそも今回の漁予測は不要になれば良いなと思っていました。
予測するまでもなく大漁やという状況です。例年であれば十分その可能性はありましたが、残念ながら昨年からの超不漁が続いている状況で現在まで水揚げはほぼ0です。

昨季の寒メヂカ漁はカツオを釣っているときにメヂカも釣れだしてメヂカ漁に転換して好漁になるという経過だったのですが、今季もカツオ漁はしているもののメヂカのケは無い(釣れそうな気配がない)ようです。

そこで本題の予測ですが、まず黒潮の予測を見ることが大事です。
いろいろな機関が予測していますが、海洋研究開発機構(JAMSTEC)がYouTubeにアップしている長期予測を参考にします。



大蛇行の元となる青い塊(冷水塊)が移動しているのが分かります。
これまでが「安定した大蛇行」であったとするなら「不安定な大蛇行」と言えるような状況でこれが不漁の一因となっている気がします。

海況の専門家も大蛇行が終わったといえるかもまだはっきりと分からないという難しい状況になっています。
上記YouTubeの元記事を参考にしてください

海況の予測が困難な中で、それを元にした漁の予測ははたして意味があるのか?というそもそも論になりますが、無理やり予測すると2/9あたりから比較的黒潮の流路が接岸気味で安定しているように見えるので、希望も込みで寒メヂカ漁が始まってくれることを期待したいと思います。
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2020年12月24日

黒潮の話〜流路と漁の関係〜

やっと本題の黒潮の流路とメヂカ漁との関係の話です。
以下に示すデータと知見は高知県水産試験場よりいただきました、ありがとうございます。

まずは過去4年間の足摺岬周辺のメヂカ曳縄漁(清水港と下ノ加江港での一本釣り漁)の水揚げの推移です。

過去4年の漁獲量

1〜3月はコンスタントに水揚げがありますが、4〜6月は年によってかなりバラツキがあります。
グラフ中、背景をピンクにしていますが、今年2020年は記録的な不漁だったことが分かります。一方2018年は好漁で年間の合計も他の年の倍近くになっています。

この2018年と2020年の4〜6月の黒潮の流路を比較します。
左が好漁の2018年、右が不漁の2020年でそれぞれひと月を上旬中旬下旬に分けています。

流路と漁獲量

こうしてみると好漁時は足摺岬に接岸し室戸岬にも接岸気味なのに対し、不漁時は足摺岬から離岸もしくは接岸気味であっても室戸岬からは離岸しています。
※いずれの年も2017年の8月から始まった黒潮大蛇行の期間中であり、紀伊半島沖で大きく蛇行していますが、大蛇行=不漁ではないとも分かります。

結論として足摺岬周辺のメヂカ漁は、黒潮の流路が接岸し東向きであれば好漁、流路が離岸し(または足摺岬で接岸していても)南東向きであれば不漁となると考えられます。

これらを踏まえ、次回は今後のメヂカ漁を予測したいと思います。
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2020年11月24日

黒潮の話〜蛇行のメカニズム〜

大蛇行は一日にしてならず。
1匹の蝶の羽ばたきがやがて大きな気象現象を引き起こすバタフライ効果という言葉もあるように、何年も続く大蛇行も始まりは小蛇行がきっかけと考えられています。

典型的な例が、九州南東沖で発生した小蛇行が数ヶ月かけて黒潮の流れに乗って発達しながら東進し、東海沖にて大蛇行となるというものです。
多くの小蛇行は発達せずそのまま消滅したり、また小蛇行のできるきっかけも数年前の北太平洋の風の変動と関係していたりと、いくつかの偶然が重なって大蛇行という状態になります。

そんな儚いような大蛇行ですが、ひとたび発生すると何年も続くことがあるのはそのメカニズムにあります。
以下の図は気象庁から転載した暖水と冷水における渦の向きです。

暖水渦と冷水渦の様子

コリオリ力(りょく)という聞きなれない言葉が出てきますが、難しいので説明は割愛します。
北半球において冷水渦が反時計回りなのは、低気圧である台風が反時計回りであるのと同じ理由です。

この反時計回りの冷水渦と時計回りの暖水渦が歯車のように噛み合って、以下の図のように大蛇行を形成します。

黒潮蛇行のメカニズム

またこの冷水渦は東向きの黒潮の流れと、西向きに進もうとする波の作用(ベータ効果というみたいですがこれも難しいので割愛!)がつり合い、停滞します。

じゃあいつ大蛇行が終わるの?ということになりそうですが終わるときは突然のようで、東向きの黒潮の流れが強くなると冷水渦が海底山脈である伊豆海嶺とぶつかって消滅したり、大きな冷水渦がちぎれて小さくなって大蛇行が終わったりというパターンがあるようです。

こういった大蛇行は、世界の他の海流には見られない黒潮独自ともいわれる現象のようで、地上や海底の地形が大きく関係し、結果的に生息する魚種の多様性につながっているのではと思います。

とは言ってもこれは「宗田節ブログ」、メヂカの漁模様が一番気になる!ということで次回は黒潮の流路とメヂカ漁との関係を明らかにしたいと思います。
posted by 四代目 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | マニアックな話

2020年10月24日

黒潮の話〜流路の形態〜

前回の続きとして黒潮の不思議に迫ります!

まず黒潮の流れの規模ですが、アマゾン川の200〜300倍!(季節・場所によって変動)と言われています。
ご存じアマゾン川は世界最大の川で、流域面積は日本の国土の18倍!という想像もつかないスケールですが、黒潮はそのアマゾン川も子ども扱いです。世界中すべての河川を足した流量の50倍もあるとか。
そんな桁違いのスケールなので前回の「黒潮の流れ」の話も「川の流れ」ではなく「風の流れ」に近いという話も納得です。
アマゾン川と黒潮の比較

そしてここからがやっと本題の、メヂカの漁に最も影響する黒潮の流路の話です。
よく黒潮が接岸しているとか、離岸したとか聞いたことがあると思いますが、大きな黒潮の流れもその流れる場所は一定ではなく、様々な要因によって変化します。

その流れる形には2つの安定した型があり、1つが「大蛇行流路」、もう1つが「非大蛇行流路」です。
非大蛇行≒接岸と考えて良いと思いますが、細かく言うと以下の図のように非大蛇行の中にも接岸型(黄色)とやや離岸型(オレンジ)と2種類あります。

黒潮流路

昔は「大蛇行」状態は黒潮が離岸し漁が不安定となる「異変」と考えられていたようですが、近年の研究で安定した1つの型であると考えられるようになっています。

ちなみに2020年10月現在はどうかというと、2017年8月から3年以上にわたって続いた観測史上2番目の長さの大蛇行が終了したかもしれない!?という過渡期に差しかかっている状況です。
※1970年〜2020年までの50年間に大蛇行状態は14年と2か月、約1/3の期間が大蛇行状態となっています。

黒潮の魚であるメヂカは、黒潮の接岸が好漁となる1つの条件です。
今年の春目近の記録的不漁も大蛇行状態が大きく関係していると考えられます。

「漁の予測には黒潮の予測」ということで、次回の宗田節ブログはその大蛇行のメカニズムに迫ります。
posted by 四代目 at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | マニアックな話

2020年09月24日

黒潮の話〜世界の海流〜

黒潮とは日本の太平洋側を南から北に流れ、房総半島沖を東に流れる暖流で日本海流とも呼ばれる日本を代表する海流です。
世界の表層の海流を以下に図示しますが、こうしてみると黒潮は北太平洋をぐるっと時計回りにまわる暖流の一部であることが分かります。

世界の表層海流

地上に棲む動物が気象に影響を受けるのと同様、海に棲む魚にとって海流は大きな影響があります。特にメヂカのような回遊魚は影響も大きくなります。
メヂカの漁について調べるうちにそもそも黒潮について知らなかったことが多く、今回のブログにまとめてみました。

まず個人的にずっと勘違いしていたことが一つ。
黒潮とはその名の通り海水が黒っぽく見えるからですが、その理由は「栄養が少ないから」
ずっと黒潮は栄養豊富な海だと思っていました!

海でいう栄養とは、食物連鎖を支える植物プランクトン(とその成長に必要な栄養塩)のことです。
植物プランクトンが「少ない→多い」につれて、「青→緑→赤」となります。赤はご存じ赤潮ですね。栄養塩が多すぎると植物プランクトンが増えすぎて赤潮となります。
黒潮は青黒い色、つまり極端に植物プランクトンが少ないため「海の砂漠」とも呼ばれているそうです。

ではなぜ現実に魚がたくさんいるのか?という疑問は「黒潮パラドックス」(パラドックス=矛盾)と名付けられ、今まさに研究が進んでいる分野のようです。
今のところ検索で出てくる研究成果では、植物プランクトンが「少ない」のは「ずっと少ない」のではなく、「多くもなる」がすぐに消費されるため「結果的に少ない」と考察されているようです。

その多くなる瞬間をもたらすのが、「乱流」と呼ばれる深層の栄養塩を表層へと運ぶ流れです。なかなか難しくなってきましたが、乱流の起こる仕組みは潮の満ち引きや地形など様々な要因があるようです。釣り好きな人は聞いただけで「魚の釣れるポイント」のようなものと想像できるかもしれません。その地球規模バージョンでしょうか。

また「黒潮の流れ」というと「川の流れ」を思い浮かべてしまいますが、実は「風の流れ」をイメージした方がより現実に近いようです。川の流れの周りは石や砂など異質なものですが、海水の周りも海水と考えると大気中の風と同じと考えた方が説明がつきやすいのかなと理解しました。

今回でまとめようと書き始めましたが、まとめきれませんでした。
続きはまた次回!
posted by 四代目 at 13:21| Comment(0) | TrackBack(0) | マニアックな話

2020年08月24日

メヂカの生態

メヂカの生態についてさらに詳しく見ていきます。
メヂカの成長については前回のブログの通りですが、1年のサイクルは以下ようになります。それぞれの時期の宗田節も比較用につけました。

メヂカの1年

産卵期を迎える5〜6月が最も脂がのって魚体が大きくなり、産卵後はやせ細り多くは死んでしまいます。
8〜9月には子供のメヂカが獲れ始め、秋にかけて徐々に大きくなり、冬季の1〜3月が寒目近と呼ばれる最高級の宗田節のできる時期となります。

ここで鋭い方は気付いたかもしれませんが、いくら成長が早いといっても6〜7月に生まれたメヂカが8〜9月に宗田節にできるほどの大きさになるのか?という疑問がわいてきます。

8〜9月のメヂカは笹目近(笹の葉のように小さい宗田節となる)と呼ばれる時期ですが、1匹150〜200gのサイズのものが主です。
そのサイズになるには半年近くかかるため、生まれて2ヶ月程度では計算が合いません。

その疑問を解消する答えは以下の図です。

めぢかの生まれる場所

実は高知県沖で漁獲されるメヂカには2つの異なった大きな群れがあるのです。
6〜7月に産卵する群れは「日本生まれ」のもの、8〜9月に獲れる群れは(1〜2月に産卵した)「熱帯生まれ」のものなのです。

こうやって生まれの違う2つの群れが高知県沖を回遊し、一部同化して越冬するので年間を通じて好漁場となるというのが、土佐清水が日本一の宗田節の産地であるという理由の1つです。

※謝辞:今回のブログでは土佐清水漁業指導所や高知県水産試験場の方々に資料やご意見をいただきました、ありがとうございます!
posted by 四代目 at 16:52| Comment(0) | TrackBack(0) | マニアックな話

2020年07月24日

続、宗田節と鰹節の違い

前回のブログでは文字情報のみでしたが、写真で見ると一目瞭然。

めぢかとかつおの比較写真

大きい方がカツオ、小さい方がメヂカです。
ちなみにこの写真は市場から仕入れてきたタンクの中にカツオが紛れ込んでいました。
メヂカ以外が入っていることはよくありますが、こんな大きいカツオは初めてでした。

メヂカとカツオの成長をグラフで表すと以下のようになります。
めぢかとかつおの成長グラフ
このグラフで見ると写真の魚は、1.5歳ほどのメヂカと2.5歳ほどのカツオとなります。
どちらもそれぞれの節の原魚としては標準的なサイズと言えるのではないでしょうか。
ほぼ2年で寿命を終える(まれに3年生きるものもいる)メヂカに対し、カツオは10年生きることもあるようです。

グラフで見るとどちらも体長は半年で急激に成長しその後は緩やかなのに対して、体重の方はずっと同じペースで増加し続けているのが面白いですね。
ちなみに魚類全体で見てもかなり成長の早い種類の魚のようです。

ここからはさらにマニアックなメヂカとカツオの起源の話ですが…
…恐竜の絶滅した6500万年前に、水深200mまでの浅瀬に棲む魚も絶滅したそうです。
その後、200m以深に棲んでいた魚が浅い海を求めて爆発的に進化したものがカツオやマグロ、サバの祖先と考えられています。中でもメヂカを含むカツオやマグロの仲間は1000万年ほど前に誕生した最新の魚類と考えられています。
(以下参考にしたサイト)
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2013/20130904.html

理にかなった体型や色は言われてみれば最新鋭の魚のように見えます。
生存競争の厳しい浅い海で生き抜くために、メヂカはより早く成長するように進化したのかもしれないですね。
posted by 四代目 at 14:05| Comment(0) | TrackBack(0) | マニアックな話

2020年06月24日

宗田節と鰹節の違い

2010年に宗田節ブログを書き始めて10年目、この記事がちょうど100回目になります。
最初のブログには月一更新の目標を掲げていたようですが、ここ数年はFacebookやInstagramが主になっているのでペース的には悪くないと思います。
これからも時事ネタ的なものはSNSにあげていき、この宗田節ブログの方は記録として使えそうなものを中心にアップしていきますのでよろしくお願いいたします。

さて記念すべき100回目は宗田節の永遠のテーマとも言える「鰹節との違い」について詳しく書きたいと思います。
以前、「宗田節の原魚は?」でもとりあげた系統図ですが、少し簡略化して図示します。

めぢかの系統図
赤い矢印で示した通り、鰹節はカツオ属のカツオからつくった節、宗田節はソウダガツオ属のマルソウダからつくった節のことです。
科(か)までは同じですが、種(しゅ)はもちろん属(ぞく)から違う魚ということです。
※図中、( )内は清水での呼び名です。

いまいちピンと来ない方のために、我々人間に当てはめると以下のようになります。

ヒトの系統図
なんとなく「属」の違いの距離感が分かっていただけたかと思います。
ゴリラやチンパンジーと間違われたくない方は、ぜひとも鰹節と宗田節の違いも覚えてください!
次回は実際の写真等を用いてさらに分かりやすく解説します。

※系統図による分類方法
界(かい)−門(もん)−鋼(こう)−目(もく)−科(か)−属(ぞく)−種(しゅ)の順で分けられていて種が一番細かく、界は動物界、植物界のように大きな最初の分岐です。さらに細かく群(ぐん)亜(あ)族(ぞく)などの分類もありますが今回は比較のため省略しています。
posted by 四代目 at 16:12| Comment(0) | TrackBack(0) | マニアックな話